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育児・介護休業法改正後の歯科医院シフト設計|2026年に確認すべき制度

育児や介護と両立するスタッフが増えるなか、歯科医院のシフトは、休業制度を用意するだけでは安定しません。
2025年に段階施行された育児・介護休業法の改正には、全事業主に求められる措置と、努力義務として示された措置があり、2026年は実際の運用を点検する時期です。
制度の対象者が申し出やすく、同時に診療を継続できる仕組みを作ることが、採用後の安心と長期定着につながります。

制度を整えても現場で休みづらい医院にならないためには、採用しても辞める歯科医院に足りない視点も併せて確認すると、運用上の課題を整理しやすくなります。

2025年改正後に歯科医院が確認すべき制度

改正内容は施行日ごとに異なり、義務と努力義務を分けて理解する必要があります。
まずは自院の規程と説明方法が、現在の制度に合っているかを確認します。
規程、申出書、管理者の説明を同時に点検します。

2026年は段階施行済みの制度を運用する年

厚生労働省が案内する2024年改正育児・介護休業法は、主な内容が2025年4月1日と10月1日に段階的に施行されました。
したがって2026年8月現在、対象となる歯科医院は、施行を待つのではなく、すでに始まっている制度を院内で確実に運用する段階です。
常勤スタッフだけでなく、制度ごとの要件を満たすパートや有期雇用スタッフも対象になり得るため、雇用区分の名称だけで除外できません。
小規模医院だから全て免除されるという理解も避け、労使協定による除外が認められる制度などは個別に要件を確認します。
一方、育児のためのテレワーク導入などは努力義務とされており、法定の義務措置と同じ表現で説明しないことが重要です。
スタッフは制度名よりも、自分がいつ、誰へ、どのように申し出ればよいかを知りたいと考えています。
就業規則、申出書、管理者向け手順、スタッフへの案内を施行内容に合わせてそろえることが最初の実務ですが、改正前の様式を使い続けると周知事項や対象年齢が抜けるため、更新日と使用開始日を明記し、古い紙面や共有フォルダ内の旧版を回収します。

子の看護等休暇と所定外労働の制限を更新する

2025年4月から、従来の子の看護休暇は「子の看護等休暇」となり、対象となる子の範囲が小学校3年生修了までへ拡大されました。
取得事由には病気やけが、予防接種や健康診断に加え、感染症に伴う学級閉鎖等や入園式、卒園式、入学式も加わっています。
歯科医院では朝の急な連絡で対象事由かを判断する場面があるため、受付担当やチーフも確認できる簡潔な案内が必要です。
また、残業免除に当たる所定外労働の制限を請求できる対象は、3歳未満の子を養育する労働者から、小学校就学前の子を養育する労働者へ広がりました。
子育て中ならいつでも希望どおりのシフトになるという制度ではありませんが、請求できる法定制度を単なる院長の配慮として扱うのも適切ではありません。
本人が制度を使うたび周囲へ謝罪しなければならない運用では、復職後も将来を描けず、転職を検討する要因になります。
対象年齢、取得事由、申出方法、急な欠勤時の連絡経路を更新し、予約調整とは切り分けて説明しますが、予約変更が必要な場合も、休暇の理由を患者さんへ詳しく伝えず、担当変更や日程調整に必要な範囲の説明にとどめ、本人のプライバシーを守ります。

介護の申出を受けてからでは遅い準備を進める

介護は開始時期を予測しにくく、スタッフ本人も仕事との両立方法を整理できないまま相談することがあります。
2025年4月から、労働者が介護に直面した旨を申し出たとき、事業主は介護休業や介護両立支援制度等について個別に周知し、利用意向を確認することが義務となりました。
さらに、介護休業や両立支援制度を利用しやすくするため、研修、相談窓口、利用事例の収集・提供、方針周知など所定の雇用環境整備も必要です。
労働者が介護に直面する前の早い段階で情報を得られるよう、40歳前後の所定時期に制度情報を提供する措置も求められます。
介護のためのテレワーク導入は努力義務であり、診療補助など在宅でできない職務に必ず適用する義務だと誤解する必要はありません。
ただし、発注、集計、文書作成など一部業務の切り分けが可能かを検討することは、離職を防ぐ選択肢になります。
申出を退職相談として受け止めるのではなく、法定制度、勤務調整、引継ぎを順に確認できる面談手順を用意しますが、介護対象者の病名や家族関係を必要以上に聞かず、制度利用に必要な確認と、本人が希望する働き方の相談を分けることで、早期の申出を促せます。

 

法定措置を診療可能なシフトへ落とし込む

制度の対象者へ選択肢を示しても、予約や代替配置が整っていなければ利用しにくさは残ります。
診療内容とスタッフの意向を同時に見える化し、継続できる勤務案を作ります。
利用開始後の診療への影響まで見込むことが大切です。

柔軟な働き方の5つの措置から2つ以上を選ぶ

2025年10月から、3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者に対し、事業主は柔軟な働き方を実現する措置を2つ以上講じる義務があります。
選択肢は、始業時刻等の変更、月10日以上利用できるテレワーク等、保育施設の設置運営等、年10日以上取得できる養育両立支援休暇、短時間勤務制度の5つです。
対象となる労働者は、医院が用意した2つ以上の措置の中から一つを選んで利用します。
歯科医院では短時間勤務と始業・終業時刻の変更が検討しやすい場合がありますが、診療時間だけを理由に形式的な制度を置くのでは十分ではありません。
どの措置を選ぶか決める際は、過半数労働組合がある場合はその組合、ない場合は過半数代表者から意見を聴く機会を設けます。
法定措置の選択と、個々のスタッフの希望を全てそのまま採用することは別ですが、利用不能な条件では制度への信頼を失います。
職種別の業務、子の送迎時間、予約の山を確認し、実際に利用可能な二つ以上を規程とシフトに反映しますが、選んだ措置は名称だけでなく、申出期限、利用単位、対象時間、シフト確定までの流れを示し、制度があっても予約上使えないという状態を防ぎます。

個別周知・意向確認と意向聴取を分けて行う

制度を掲示板へ載せるだけでは、改正後に求められる個別対応を満たせない場面があります。
3歳未満の子を養育する労働者には、子が3歳になる前の所定時期に、医院が選んだ柔軟な働き方の措置を個別に周知し、利用意向を確認します。
これとは別に、妊娠・出産等の申出時と子が3歳になる前の所定時期には、勤務時間帯、勤務地、両立支援制度の利用期間、業務量や労働条件について個別に意向を聴くことが必要です。
聴いた意向には、自院の状況に応じて配慮することが求められますが、聴取した希望が自動的に確定シフトになるという意味ではありません。
管理者は「何日休みたいか」だけでなく、送迎の制約、担当患者の継続、避けたい時間帯、変更可能な条件を具体的に確認します。
スタッフにとっては、希望を言ったことで評価や契約更新に不利益が出ないと分かることが、率直な相談の前提です。
周知した日、本人の意向、検討した配慮、回答内容を記録し、変更があれば再面談できる流れを作りますが、本人の意向に沿えない部分がある場合も、検討した選択肢と理由、代替案を説明し、一定期間後に状況を見直す日を決めることが納得につながります。

職種別の最低配置と代替手順を先に決める

柔軟な勤務を認めるたびに院長が予約を組み直す方法では、対象者が増えたときに続きません。
曜日と時間帯ごとに、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、受付の最低配置と、各人が担当できる業務を一覧にします。
例えば夕方に歯科衛生士が減る日はメインテナンス枠を先に調整し、受付が少ない時間は自動精算や電話受付時間の見直しを組み合わせます。
子育てや介護の制度利用者だけを固定的に補助業務へ移すと、技能形成や評価の機会が狭まり、本人が不利益を感じることがあります。
担当患者の引継ぎ、急な欠勤時の連絡、翌日に回せる業務、管理者判断が必要な業務を平常時に決めておくことが大切です。
残るスタッフへ無制限に負担を移すのではなく、予約数、応援配置、休憩、残業の変化も同時に確認します。
個人への特別対応ではなく、誰が制度を使っても動く診療モデルとして設計することで、対象者も周囲も安心できますが、月間シフトだけでなく年間の学校行事や繁忙期を共有し、応援可能者の育成と採用計画を早めることで、急な調整を特定の人へ集中させずに済みます。

 

公平な運用を採用と長期定着につなげる

両立支援は対象者だけの問題ではなく、チーム全体の仕事の分け方を見直す機会です。
約束と実態を一致させることで、既存スタッフにも求職者にも信頼されます。
対象者と支える人の双方から定期的に意見を聞きます。

就業規則と管理者の説明を一致させる

本部や社会保険労務士が規程を更新しても、院長やチーフの説明が古いままでは制度は利用されません。
育児休業、介護休業、子の看護等休暇、所定外労働の制限、短時間勤務、柔軟な働き方の措置について、対象、申出先、期限、必要書類を一枚の確認表へ整理します。
労使協定による対象者の除外を設ける場合は、制度ごとに認められる範囲が異なるため、一括して「パートは対象外」と案内しないよう注意します。
法定義務、努力義務、医院独自の上乗せ制度を欄で分ければ、スタッフも誤解しにくくなります。
管理者研修では申出を受けた際の第一声、個別周知の項目、意向聴取の質問、回答までの期限を練習します。
相談する相手によって結論が違う職場では、スタッフは権利を主張したと思われることを恐れて黙りがちです。
説明資料と面談記録を共通化し、判断に迷う場合は都道府県労働局や専門家へ確認する手順を決めますが、年に一度は対象年齢の到達予定者、介護情報提供の時期、個別周知の実施状況を一覧で確認し、申出がないことを制度が不要な証拠にしないようにします。

制度を使う人と支える人の不公平感を調整する

両立支援を定着させるには、制度利用者を守ることと、周囲の負担を放置しないことを同時に進める必要があります。
利用理由や家庭事情を本人の同意なく詳しく共有せず、チームにはシフト変更、役割分担、応援の範囲だけを伝えます。
一方、夕方勤務や土曜勤務が同じ人へ偏る場合は、勤務回数、手当、休日、評価への反映などを見直します。
子どもがいない人は制度を支える側という固定観念を作ると、自身の通院、学習、介護などの事情を相談しにくくなります。
法定制度の対象と、全スタッフが利用できる希望休や勤務調整を分け、公平とは全員を同じシフトにすることではないと説明します。
制度利用者も、引継ぎや変更連絡を所定の方法で行えるため、過度な罪悪感を抱かず仕事へ集中できます。
面談と勤務実績から負担の偏りを早期に見つけ、予約枠や人員計画を修正することがチームの納得につながりますが、支える側にも面談を行い、業務量や休憩の変化を確認して必要な調整を行えば、制度利用者へ不満が直接向かうことを防ぎ、協力を継続できます。

求人で制度名より利用できる仕組みを伝える

求人票へ「育児支援充実」「介護と両立可能」と書くだけでは、求職者は実際の働き方を想像できません。
勤務時間を変更できる単位、相談時期、予約の引継ぎ方法、復帰後の教育、評価への影響など、整備済みの運用を具体的に伝えます。
まだ利用実績がない制度を「取得実績多数」と見せることは避け、現在利用できる措置と今後検討する選択肢を分けます。
見学時には制度利用者の個人情報を語るのではなく、標準的な申出からシフト確定までの流れを説明します。
求職者は休めるかだけでなく、休業や短時間勤務の後に技術や担当患者を取り戻せるかも見ています。
面談件数、申出から回答までの日数、時間帯別の人員不足、残業や予約変更を毎年確認すれば、求人で伝える内容も実態に合わせて更新できます。
制度を守りながら診療を継続できる医院は、生活が変化しても働き続けられる職場として選ばれやすくなりますが、法改正や人員構成の変化に合わせて制度説明と勤務例を更新し、実現できる内容だけを求人へ載せることが、採用後の期待差を小さくします。

 

2026年の歯科医院には、2025年に施行された改正内容を規程だけでなく、個別周知、意向確認、意向聴取、シフトへ反映する実務が求められます。
柔軟な働き方の措置は2つ以上を用意する義務、育児や介護のためのテレワーク導入は該当部分での努力義務であり、性質を分けて説明することが大切です。
最低配置と代替手順を整え、利用者と周囲の負担を定期的に見直すことで、両立支援は長期定着を支える仕組みになります。
歯科求人.comの採用支援でも、医院の実際の制度と運用を求職者へ誠実に伝えることが、入職後のミスマッチを減らす第一歩になります。

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福原隆久のイメージ
歯科医師・歯学博士
福原隆久
29歳で開業し、6医院を展開。歯科医師15名、スタッフ総勢120名規模の組織を率い、臨床の現場に立ちながら、人材採用、人材育成、医院経営、組織づくりに取り組んでいる。現場と経営の両面から培った知見をもとに、歯科求人.comで実践的な情報を発信している。
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